どうも院長です。
先日、沖縄コンベンションセンターで開催された「第64回日本小児歯科学会大会」に参加してきました。会期は2026年5月21日・22日、テーマは「チャンプルーの地で育むこどもの笑顔」でした。

今回はポスター発表の会場を回っていて、「手づかみ食べ(Baby-Led Weaning、以下BLW)」をテーマにした発表をいくつか見かけました。育児の現場でも関心が高まっているテーマだと感じたので、今回はそれをきっかけに、小児歯科医の立場からBLWについて一般的な情報を整理してみたいと思います。

そもそもBLW(手づかみ食べ)とは
BLWとは、離乳食を保護者がスプーンで与えるのではなく、赤ちゃん自身が手づかみで食べ物をつかみ、口に運ぶことを中心に進める離乳の進め方です。ペースト状の食事から始める従来の方法とは異なり、比較的早い段階から軟らかく調理した野菜のスティックなど、手でつかめる形状の食材を提供するのが特徴です。
WHOおよび諸外国のガイドラインでは、生後8か月頃までに手づかみ食べを開始することが推奨されています。本邦の「授乳・離乳の支援ガイド」(厚生労働省、2019年改訂版)でも、手づかみ食べの目安は9か月頃とされており、BLWという言葉が広まる以前から、手づかみ食べ自体は発達支援の一環として位置づけられてきました。
咀嚼機能の発達について、実際のところどう考えるべきか
BLWと咀嚼機能の関係については、国内でも近年、追跡調査を行った研究がいくつか報告され始めています。ただ、この分野の研究はまだ症例数の少ないアンケート調査が中心であることが多く、「BLWをすれば咀嚼機能が確実に伸びる」と一般化して結論づけるのは時期尚早だと感じます。BLWを選ぶ家庭は、もともと食に対する意識が高い傾向がある可能性も指摘されており、観察される食嗜好や咀嚼機能の差が「手づかみで食べさせたこと」そのものの効果なのか、「保護者の食に対する関わり方」の影響なのかは、慎重に見極める必要があります。これは相関と因果を区別して読む必要がある、この種の研究に共通する注意点だと思います。
一方で、咀嚼機能の発達という観点から実際に重要だと考えられているのは、離乳期にどれだけ多様な形状・固さの食べ物を経験するかという点です。BLWという手法そのものが特別というよりは、BLWを実践する過程で結果的に固形食への移行が早まり、多様な食感を経験する機会が増えることが、口腔機能の発達につながっている可能性がある、という見方が実態に近いのではないかと考えています。だとすれば、BLWという育児法を選ぶかどうかにかかわらず、保護者主導の離乳であっても、月齢に応じて食材の固さや形状を計画的に広げていくことができれば、同様の効果は十分期待できるはずです。

もう一点、臨床の立場から付け加えておきたいのは安全面です。BLWは窒息のリスクが心配されることが多いテーマです。月齢に合わない大きさ・固さの食材を与えないこと、食事中は必ず目を離さないことなど、基本的な安全管理は、BLWか従来法かという方法の違いによらず共通して重要だと考えます。心配な点があれば、自己判断で進めず、かかりつけの小児科・小児歯科に相談しながら進めることをおすすめします。
まとめ
BLWは近年注目されている離乳の進め方ですが、「BLWが優れている」と断定するのではなく、「離乳期にどれだけ多様な食体験を積めるか」という本質に注目するのが妥当だと感じています。手づかみ食べを取り入れるかどうかは各家庭の判断だと思いますが、いずれの方法でも、月齢に応じた食形態のステップアップと安全への配慮は変わらず大切です。気になることがあれば、自己判断で進めず、かかりつけの小児歯科でご相談いただければと思います。
それではまた!













